夫の遺産を妻と幼い子どもで分け合うときはどうするの?


ママ友A:この前の葬儀は気の毒だったわね。幼いお子さん2人をのこしてご主人を亡くされて。
ママ友B:お子さんが小さいから、ご主人の遺産はすべてお母さんが引き継ぐのよね?だって、これからの生活費も養育費もすべて一人で背負っていくのだもの…。


■未成年の子との遺産分割には特別代理人が必要■

民法の規定による法定相続分は、どんなに子どもが幼くても、妻と子どもで1/2ずつの権利があります。子どもが複数いれば、遺産の1/2分を子どもの人数で按分します。

しかし、未成年の子どもは単独では法律上の判断を行うことができません。では、未成年の子どもが遺産を相続する場合には、どのような手続きが必要なのでしょうか?

遺産分割をする場合には、子ども一人ずつに代理人を決めて、家庭裁判所の承認をもらい、その代理人と遺産分割協議を行う必要があります。これは遺産額の大きさには関係ありません。

通常、子どもの代理人は親権者です。このため、遺産分割のときも親権者である子どもの母親、つまり妻が代理人になると考えがちです。しかし、妻と子が互いに相続人である場合は、その関係は同じ遺産を取り合う利益相反者となります。よって、妻は代理人にはなれず、利害関係のない第3者を代理人に立てなければなりません。これを“特別代理人”といいます。

また、子どもが複数いる場合も互いに利益相反するため、一人一人に別々の代理人が必要となります。特別代理人になるためには、特別な資格は必要ありません。通常では、未成年の子の叔父や叔母などの親族のほか、弁護士、司法書士などが選任されることも多いようです。

■遺産分割のやり直しは成人してから5年以内に■

正式な手続きをせずに夫の遺産を使ってしまうと、相続人である子どもの権利を侵害していることになります。夫の財産の半分しか妻には権利はないのですから。それは、子どものための養育費に使おうと教育費に使おうと関係ありません。

もし、子どもが成人して「あの時の自分の相続分はどうなったのか?」と疑問に思い、遺産分割のやり直しを裁判所に請求すれば、子どもは自分の取り分を取り戻すことができます。妻は、権利がないのに勝手に自分のものにしたという“無権代理行為”を行ったことになり、お金を子どもたちに返さなくてはなりません。子どものために使ったということと、法的責任を負うという問題は別なのです。

遺産分割のやり直しを行うことができるのは、成人してから25歳の誕生日を迎える日の前日までの5年間です。5年を過ぎれば時効となり、請求の権利を失います。

■子どもに相続した財産から教育費を支払うという方法も■

では、未成年の子どもとの遺産分割は、どのように行えばよいのでしょうか?1つご提案しましょう。遺産が自宅といくらかの預貯金だった場合、家は妻が相続し、預貯金のうち教育費に必要な額程度を子どもたちに相続させ、その他の残りを生活費として妻が相続するというのはどうでしょうか。そして、教育費は子どもたちの口座から引き出すようにします。自分の学費を自分のお金で賄うことは少しも不自然なことではありません。

将来に遺恨をのこさないためにも、きちんと特別代理人を立て、子どもたちとの遺産分割協議書を作成することが大切です。手続きはそれほど大変ではなく、自分で行うことも可能です。わからないことがあれば、最寄りの家庭裁判所に問い合わせてみましょう。きっと、親切に教えてくれるはずです。